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【新五感と遊び④】触覚と視覚と聴覚|コラム|アネビーの遊び研究所

アネビーの遊び研究所

【新五感と遊び④】触覚と視覚と聴覚

2026.04.15

これまでの【新五感と遊び】シリーズは、総論としての「感覚と遊び」から始まり、個々の感覚として、バランス覚とボディ覚を取り上げてきました。

今回は、新五感の中でまだ触れていなかった3つの感覚について取り上げます。

タッチ覚(触覚)~自分と自分以外の境界線

タッチ覚(触覚)は、ご存じの通り、皮膚に触れた物の硬さや感触、温度、触れた時の力加減や痛みを感じる感覚です。
もう少し専門的な視点で見るとタッチ覚(触覚)には大きく4つの役割があります。

① 識別
② 防衛
③ 情緒の安定
④ からだの境界の把握

生まれたばかりの赤ちゃんは、外界と未分化な状態にあると言われています。つまり、自分と他者、自分と外の世界との境界線すら意識できていない状態です。
その状態から、誰かに抱っこされたり、偶然動かした手足が何かに触れたり、指をしゃぶったり、衣服や布団にくるまれたりといった体験を何度も繰り返すことで、少しずつ自分のからだと外界との境界線を把握していきます。この「物理的な自分と外界の違い」を意識できるようになることで、初めて「自分と他人は違う存在である」という認識へとつながっていくのです。

その、物理的なからだの境界を作る大切な役割をしているのがタッチ覚(触覚)なのです。

タッチ覚(触覚)~自分と自分以外の境界線

タッチ覚(触覚)の遊び場として、まず思い浮かぶのは砂場ではないでしょうか。砂場遊びは、手で砂に触れたときの感触がタッチ覚に働きかけるだけでなく、手・足・顔・からだ全体にまとわりつく砂が、からだの境界を強く意識させてくれます。室内のボールプール遊びも同様です。
実は、夏の水遊びも、本質的には「からだの境界線」を意識させる遊びです。そのため、必ずしもプールである必要はなく、砂場での泥んこ遊び、ホースでの水まき遊び、水鉄砲遊びなどでも十分にその効果が得られます。

さて、タッチ覚(触覚)のもう一つの役割に「識別」があります。触れた物がどのような物かを感じ取る働きで、識別した結果「熱い」「痛い」といった感覚が強い場合には、危険と判断して防衛行動を起こします。熱い物に触れて、とっさに手を引っ込めるような行動がそれにあたります。
神経発達症(いわゆる発達障がい)のある子どもたちの中には、この「識別」と「防衛」のバランスがうまく取れていない場合があります。つまり、感覚が過敏な状態です。
その結果、本来は身の危険につながるほどの熱さや痛さではないにもかかわらず、反射的に過剰な反応をしてしまうことがあります。それが、本人にとっての困りごとや、周囲から見ると気になる行動として表れることがあるのです。

視覚~情報収集のエキスパート

視覚は、目で外界の光を感じ取る感覚で、得られた光の情報は脳内で映像や画像として処理されます。
人が外の世界をとらえる際、その情報の80%以上は視覚によるものだとも言われています。視覚が発達するということは、単に視力が良くなることだけを意味するのではありません。大きさや奥行き、前後関係、動いているものをとらえるといった、機能面の発達を含んでいます。
このように、目でとらえた視覚情報を、過去の経験と結びつけて脳内で意味づけし、処理・解釈する力を「視知覚」と呼びます。この能力は、空間認知や図形の理解、文字の読み書きなど、発達上の重要な要素の基盤となります。

視覚~情報収集のエキスパート

また、「見て、集中すべきところに集中できる能力」も非常に大切です。神経発達症(いわゆる発達障がい)の子どもたちの中には、目の横で手をひらひらさせる遊びをする子がいます。これは「周辺視遊び」と呼ばれ、集中に必要な「中心視(目の中心で細部を見る能力)」よりも、周辺視のほうが優位になっている状態で見られる行動です。

中心視が発達しにくい状態が続くと、将来的に図形や文字の理解に困難が生じる可能性があります。
中心視を発達させる遊びとしては、パズルや迷路、絵の間違い探しなどが挙げられますが、からだを動かす遊びの中でも、小さな穴から覗く遊びや、ボール投げなど「狙いを定める」遊びも効果的だと言われています。また、トンネルなど、外界の余計な情報を遮断できる場所で遊ぶことも有効なアプローチの一つです。

聴覚~コミュニケーションや論理的思考の感覚

聴覚は、耳で外界の音を感じ取る感覚です。視覚と同様、単に耳が良い・悪いということではなく、音に反応できるか、音の聞き分けができるか、音の方向をとらえられるかといった機能面を見ることが大切です。

聴覚は、言語の獲得と密接な関係があります。例えば、英語が話せない多くの日本人は「L」と「R」の発音を区別できません。しかし赤ちゃんは、「L」と「R」を聞き分けていることが研究で明らかになっています。つまり、生まれた時点では、すべての言語に対応できる聴覚を持っているわけです。

しかし脳は、その後の経験を通して、自分が生きる環境の中で必要のない能力を徐々に省き、その分、他の能力が発揮できるように変化していきます。その結果として、日本語では必要のない「L」と「R」を区別する能力が失われていくのです。

聴覚~コミュニケーションや論理的思考の感覚

余談ですが、視覚にも同様の例があります。赤ちゃんはチンパンジーの顔を見分けることができるそうですが、これも同じ理由で、その能力は次第に使われなくなっていきます。

話を戻すと、保護者をはじめとした周囲の大人の会話を聞き続けることで、子どもは単なる「音」に意味があることを理解し、その意味のある音を「言語」として獲得していきます。
また、聴覚においても「集中すべき音に集中できる能力」は発達します。これは「カクテルパーティ効果」とも呼ばれ、雑音の多い環境の中でも、自分の名前が呼ばれると気づけたり、知り合いの声を聞き分けられたりする能力のことです。
聴覚を育てる遊具や遊びも数多くあります。楽器の遊具や伝声管のように、直接音に関わる遊具はもちろん、ブランコや空中ケーブルなど、移動することで音の聞こえ方が変化することを体感できる遊具もあります。また、トンネルなど、音の響き方が変わる遊び環境も、音に集中する貴重な経験になるでしょう。

ここまでのコラムで、新五感である
「バランス覚(前庭覚)」
「ボディ覚(固有覚)」
「タッチ覚(触覚)」
「視覚」
「聴覚」
について、すべて解説してきました。
次回は、それぞれの感覚が相互に作用する「感覚統合」について触れていきたいと思います。

アネビー著

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