発達障がい児の遊び環境
2026.02.13
考えるほど難しい?発達障がい児の遊び環境
このコラムでも、インクルーシブな遊び環境について取り上げたことがありますが、今回は「発達障がい児」に焦点を当てて、より良い遊び環境とは何かを考えていきます。
発達障がいとは

発達障がいとは、脳機能における発達の偏りによって、コミュニケーション、学習、注意、社会性などに困難が生じる生まれつきの特性(神経発達症群)の総称です。自閉スペクトラム症、注意欠陥・多動症、学習障害などが含まれます。
主な種類
- 自閉スペクトラム症(ASD):対人関係やコミュニケーションの困難、強いこだわりなど。
- 注意欠陥・多動症(ADHD):集中しにくい、じっとしていられない、衝動的に行動するなど。
- 学習障害(LD):聞く・話す・読む・書く・計算するなど特定の学習が困難。
これらの特性に加え、感覚刺激に対する「びん感(過敏)」や「どん感(鈍麻)」がみられることがあります。
発達障がい児の遊び環境をイメージしにくい理由
身体障がい児(車いす利用児等)の場合、車いすごと乗れる遊具や、寝転がったまま利用できる遊具など必要な配慮を比較的イメージしやすいものです。
一方、発達障がい児の場合は、外見から動きの制限が分かりにくいため、
「何に配慮すればよいのか」が非常にわかりにくいのです。
現在(2026年2月)、インクルーシブ公園が各地で整備されています。取り組み自体は歓迎すべきですが、実態としては「車いすで遊べる遊具を置いたらインクルーシブ」という状態に留まっているケースが少なくありません。
インクルーシブの考え方は、障がい児だけでなく国籍や言語、性差、障がいの有無など、多様な背景の人たちが一緒にいられるということです。
障がいで考えてみても、身体障がいだけでなく、知的障がい、視覚障がい、聴覚障がい、難病、発達障がいなど、すべての障がいも含めて包括的な環境を目指すのが本来の姿です。
このコラムでは、イメージしにくい「発達障がい児の遊び環境」をより良くするため、次の2つの視点から整理します。
① 発達障がい児の発達を促す遊び環境
② 発達障がい児が感じる困りごとを支援する遊び環境
① 発達障がい児の発達を促す遊び環境
公園、園庭、校庭、児童館などすべての遊び場は、本来 子どもの発達を促すために存在しています。
もちろん、その子の月齢や年齢によって発達する部分の違いはあります。乳児期であれば、ハイハイ、つかまり立ち、伝い歩き、よちよち歩きなどであり、幼児期であれば、さまざまな運動機能、手指の器用さ、想像力、創造力、社会性などです。
障がいの有無にかかわらず、子どもは自分のペースで遊びを通して発達の階段を上ります。
・「どん感」による感覚探究
ひとりで歩けるようになった1~2歳くらいの子が、ひとりでくるくる回って遊んでいる姿をよく見かけます。これは、その時期の発達段階が「つかまらずに立ち、多様な動きの中でバランスをとる」ことだからです。いろいろな動きで重力の変化を楽しみながら対応しようとしているわけですね。
さて、発達障がい児も同じような行動をすることがあります。
くるくる回る、飛び跳ねる、走り回るなどです。1~2歳であれば発達段階における行動ですが、5~6歳を超えてもその行動を続けることがあります。
これらの行動を理解するキーワードは、「どん感」です。
つまり、感じにくいわけです。
- バランス覚で地球の重力が感じにくい
- ボディ覚で自分のからだの位置が感じにくい
- ボディ覚で自分のからだにかかっている力が感じにくい
こういった、感じにくい刺激を自ら求めているのです。これを「感覚探究」と言います。
・遊具は“感覚を届きやすくする装置”

感じにくい感覚を、少し強めにして感じやすくしてあげるのが遊具の役割です。
これまで重力や自分のからだのことが感じにくく、「感覚探究」に多くの労力や時間を費やしていた子どもが、遊具で遊ぶことで感覚が感じやすくなると、それまでの労力や時間を自身の「発達」に使うことができるのです。
では、実際の遊具が、感じにくい感覚を少し強めにして感じやすくしていることの例をご紹介します。
- ブランコ:往復運動での方向や速度の変化→バランス覚
- すべり台:速度変化と座面の傾きの変化→バランス覚
- トランポリン:着地時の衝撃→足をはじめとした全身の筋肉→ボディ覚
- クライミングやジャングルジム:登るときに手足の長さや位置を常に意識→ボディ覚
- 砂場/水遊び:様々な触り心地の違い→触覚
- シーソー:上下の往復運動による重力変化+着地時の衝撃→バランス覚とボディ覚
整理すると下記の流れになります。
発達障がい→感覚がどん感→遊び環境であえて強めの刺激→刺激を脳が受け取りやすくなる→労力や時間を発達やコミュニケーションに使うことができる
② 発達障がい児が抱える「困りごと」への支援としての環境
次に「びん感(過敏)」による困りごとです。

・感覚がびん感だと…
- 光がまぶしすぎる
- 何気ない音が大きく聞こえて苦痛
- バランス覚がびん感で、遊具が怖い
- 触覚が過敏で砂が苦手
など、感覚がびん感すぎることで、「その場にいられない」「その活動ができない」ということが起きます。
・「びん感」による感覚回避のための工夫例
- 小屋/トンネル/複合遊具の1階部分など閉鎖空間
→視覚や聴覚がびん感な子どもの避難場所に - すべり台/ブランコの多様な難易度や種類
→バランス覚のびん感さに応じて自分で挑戦できるものを選べるように - 砂場のそばに手洗い場を設置
→砂遊びをした後にすぐに手を洗えるようにしておくことで安心して挑戦しやすくする
工夫次第で「参加できる範囲」を大きく広げることができます。
なぜ工夫が必要なのか?
―――それは、子どもにとって遊ぶことは権利だからです。
子どもの権利条約(日本ユニセフ協会 抄訳)より:
第2条 差別の禁止:すべての子どもはみんな同じ権利と等しい価値を持っています。
第6条 生きる権利・育つ権利:すべての子は生きる権利と発達する権利を持っています。
第23条 障がいのある子ども:障がいがある子どもも尊厳が守られ社会に参加しながら生活する権利を持っています。
第31条 子どもは休んだり遊ぶ権利を持っています。
子どもには遊ぶ権利を持ち、遊びを通して発達し社会に参加するのです。
だからこそ、発達障がいの子どもも含めた障がい、国籍、性別、年齢、言語の違いをこえて、多様な子どもがかかわりあえる遊び環境をつくることが求められます。
そのかかわりあいこそが、「その子を、その子のペースで、その子らしく」発達させていくのです。










