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【新五感と遊び⑤】感覚統合とは?遊びが子どもの発達を育てる理由|アネビーの遊び研究所

アネビーの遊び研究所

【新五感と遊び⑤】発達のカギ~感覚の相互作用

2026.05.18

これまでの【新五感と遊び】シリーズでは、遊びを通した感覚入力の大切さや、特に重要な五つの感覚についてお伝えしてきました。
今回は、それらの感覚が互いに影響し合いながら働く「感覚統合(Sensory Integration)」についてお話しします。

【新五感】

感覚統合の話に入る前に、新五感をおさらいしましょう。

バランス覚(前庭覚)
→ からだの傾きや揺れ、回転、スピードを感じる感覚

ボディ覚(固有覚)
→ からだの形や力加減など、筋肉や関節の動きを感じる感覚

タッチ覚(触覚)
→ 触れた物の質感や温度などを感じる感覚

視覚
→ 光の色や強さを感じる感覚。得られた情報は脳内で映像として再構築される

聴覚
→ 音の高さや大きさ、音質を感じる感覚

この中でも特に重要な感覚が、バランス覚・ボディ覚・タッチ覚の三つです。
アネビーでは、その頭文字を取って「BBT」と紹介しています。

【発達の階段】

視覚~情報収集のエキスパート

こちらは、感覚統合の考え方を分かりやすくするために、アネビーが作成した「発達の階段」の図です。

一番下の段には新五感が並び、一番上の段には「根っこの力」と呼ぶ、子ども期に身につけていきたい力が記されています。
2〜4段目には、発達の過程で獲得されるさまざまな要素が配置されています。

この発達の階段には、いくつかのルールがあります。

子どもは階段を下から上へと発達していく
同じ段にある要素がバランスよく育ち、感覚同士が相互作用することで、次の段へ進む
どこかの段でつまずきが見られる場合、その下の段にもつまずきがある
突き詰めると、最も重要なのは一番下にある新五感を育むことと言われています。

【感覚の相互作用の例】

感覚同士の相互作用の一例です。
2段目には「姿勢」があります。
バランス覚がからだの傾きを感じ取り、ボディ覚がからだの位置を調整することで、適切な力加減が生まれ、姿勢を保つことができます。
赤ちゃんが初めてお座りできるようになるためには、筋力だけでなく、バランス覚とボディ覚がうまく連携して働く必要があるわけです。
これが「感覚の相互作用」です。
姿勢とは、単にきちんと座れるかどうかではありません。
重要なのは、からだの**「軸」**がしっかりとできているかどうかです。
軸が安定していないと、左右や前後の感覚があいまいになり、その上の段にある「からだの把握」や「運動コントロール」にも影響が及びます。

一番上の「根っこの力」の中には「自己抑制」、つまり我慢強さがあります。
その一つ下の段には「器用さ」や「言語・発語」があります。
器用さとは、繊細な力加減ができること。
言語・発語は、単におしゃべりができるかどうかではなく、物の名前や身の回りの出来事を言語化して考えられるか、また相手の話を頭の中で映像化して理解できるかという力も含みます。
もし、明らかに我慢が苦手な子がいた場合は、「自己抑制」だけを見るのではなく、その下の段にある「器用さ」や「言語・発語」に目を向け、つまずきがないかを観察します。
つまずきが見られれば、その力を育む活動や遊びを取り入れていくことが大切です。
声高らかに「我慢しなさい!」と言っても、あまり効果がない理由もここにあるのです。

【感覚統合理論の誕生】

感覚統合の考え方は、1960年代にアメリカの作業療法士 A. ジーン・エアーズ によって提唱されました。
アメリカでは当時から、作業療法士が障がいのある子どもの支援を行っており、エアーズも臨床の中で理論を体系化していきました。
当初は主に学習障がいのある子どもを対象としていましたが、その後、自閉症をはじめとする発達障がい児や、重度の知的障がい児にも適用されるようになっていきます。

エアーズは感覚統合を「脳内の交通整理」に例えています。
脳は、バランス覚やボディ覚、タッチ覚など、複数の感覚情報を整理し、相互に連携させています。
一方で、感覚情報がうまく整理できない状態を「神経の交通渋滞」と表現しました。

感覚統合の理論は障がい児支援から生まれましたが、その考え方自体は、定型発達の子どもも含めたすべての子どもに共通するものです。

感覚統合が順調に進めば定型発達となり、どこかでつまずきが生じ、本人に困りごとが生まれた状態が神経発達症(いわゆる発達障がい)と捉えることができます。

【感覚統合理論の誕生】
感覚統合遊びのためのトレーニングルーム

繰り返しになりますが、感覚統合の考え方自体は、定型発達の子どもも含めたすべての子どもに通じる考え方です。

定型発達の子どもの場合は、家庭や園に豊かな遊び環境があれば、遊びながら発達に必要な感覚刺激や発達の要素を自分自身で取り入れていくことができます。
しかし、逆に遊び環境が貧弱だと、本来自分で発達させる能力を持っているのに、発揮できずに困りごとが生まれてしまう可能性もあります。
最近では、スマートフォン使用の低年齢化などが問題になっていますが、その問題もここに通じます。スマートフォンからは、多岐にわたる豊かな感覚刺激が得られないからなのです。

【すべての遊びは感覚統合のために行われている】

遊びは何のためにあるのでしょうか。
遊びが子どもの発達に重要であることは、多くの人が実感していることだと思います。

ホイジンガ、カイヨワ、ピアジェ、モンテッソーリ、フレーベル——

多くの教育者や心理学者、哲学者が「遊び」について考察してきました。

感覚統合の考え方も、「遊びとは何か?」という問いへの一つの答えだと考えています。
「感覚刺激は脳の栄養素」という言葉は、コラム【新五感と遊び① 感覚と遊び】でも紹介しました。
遊びによって多くの感覚刺激を受け取り、脳が育まれ、発達につながっていく流れを整理すると、以下のようになります。

遊ぶ

バランス覚、ボディ覚、タッチ覚、視覚、聴覚からのたくさんの感覚刺激を得ることができる

感覚は脳の栄養素

脳が発達

感覚刺激が脳の中で相互作用を起こす(感覚統合)

寝返りも、お座りも、つかまり立ちも、よちよち歩きなど発達段階がすすんでいく

発達段階がすすみ、最終産物である根っこの力(非認知能力)を獲得する

このように、からだを動かす遊びは、最終産物である根っこの力につながっています。

すべり台、ブランコ、シーソー、クライミング、うんてい、トランポリン……
すべての遊具は、子どものからだの動きを引き出し、豊かな感覚刺激をもたらしてくれる存在なのです。

【すべての遊びは感覚統合のために行われている】
すべての遊びは感覚の相互作用につながる

感覚統合が最も効果的に働く条件は、次の三つだと言われています。
① 子どもが自ら求める楽しい活動であること
② 子ども自身が主体的に行うこと
成功体験をともなうこと

これらは、まさに「遊び」そのものでですよね。

子どもは遊ぶことで感覚刺激を受け取り、それらを統合しながら、自分自身を少しずつ発達させていきます。


  • ブランコをすれば思いやりが育まれる
  • すべり台をすれば我慢強さが育まれる
  • クライミングをすれば協調性が育まれる

もちろん「ブランコ=思いやり」という単純な話ではありませんが、感覚統合の視点で見ると、からだを使う遊具遊びこそが、根っこの力全体の育ちにつながっていると言えるのです。


遊びの視点から感覚統合を解説したアネビー発行の『新五感ナビゲーター』はアネビーのホームページ内「カタログ」のページに収納されていて全文をご覧いただけます。
https://www.aneby.co.jp/ebook/shin5re.html

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ぜひご覧ください

アネビー著

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