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【新五感と遊び③】自分で自分を感じるボディ覚|コラム|アネビー

コラム

【新五感と遊び③】自分で自分を感じるボディ覚

2026.02.13

自分を感じる?

生卵を割らないように手でつかむ。私たち人間には自然にできる動作ですが、一昔前のロボットにはとても難しい作業でした。力が入りすぎて、すぐに割れてしまったわけです。
ではなぜ、ロボットはできなくて人間はできるのでしょうか?

その理由は、「力加減ができるかどうか」にあります。

私たちは、生卵に対して少しずつ力を入れていき、持てるギリギリの力の入れ具合を調整することができます。一方ロボットはプログラムに従い「●●㎝まで指を閉じる」という動きをするだけで、そこに自発的な力加減はありません。正確な命令ができれば卵を割らずに持てるかもしれませんが、それはロボット自身が調整しているわけではないのです。

力加減――。

人間には「どのくらい力を入れているか?」を自然に感じるセンサーがあります。

固有覚(固有受容覚)と呼ばれる感覚で、アネビーでは“自分自身を感じる感覚”ということで「ボディ覚」と呼んでいます。

ボディ覚には大きく2つの役割があります。

  • 力の入れ具合を感じる
  • 自分の手足・指など、関節がどのくらい曲がっているかを感じる

力の入れ具合を感じる

持った瞬間にジュースの量がわかる

飲み物が入ったコップを持った瞬間、たとえ目で見ていなくても「たくさん入っている」「半分くらい」「もう少しでなくなりそう」などがわかります。
コップを持つときに働く筋肉の状態を感じ取っているからです。これがボディ覚による「力の入れ具合を感じる」ということです。

力加減を感じることは、単に物の重さを知るだけではありません。
乳児期の首すわり・寝返り・お座り・つかまり立ち・つたい歩き・よちよち歩き。幼児以降なら、走る・スキップ・ジャンプなどの基本動作に加え、ボール遊び・縄跳び・ブランコをこぐといった複雑な遊びまで――。

すべての運動の中で常に力の入れ具合を確認しているのです。

発達がゆっくりな場合、運動面のつまずきや不器用さとして現れることがあります。

いろいろな「重さ」を持つ

力加減を育むのには、遊びの中でいろいろな重さを体験するのが効果的です。

  • 砂場遊び:大きなバケツ小さなバケツ、フライパン、お玉…
    さまざまな入れ物で砂を運ぶことで自然と力加減が育ちます。
  • 水遊び:じょうろで水をあげるときに、満タンのときから徐々に水が減っていく、その変化に応じてわせて力を調整する経験ができます。

また、実はトランポリンも優れた力加減の遊具です。
跳んで着地するときに足へ大きな力がかかり、全身で力の入れ具合を調整する必要が出てくるからです。

さらに、目いっぱいの力を出す経験も重要です。
大きな枝を引きずる、大きなウレタンブロックを持ち上げる、友達が乗ったブランコを押す、ロープで引っ張り合う…。
100%の力を知ってこそ、0%や50%の力を理解できるのです。

自分のからだの形を感じる

あたまの上で拍手してください。
できましたか?

見えないはずなのに、なぜ頭の上で、両手を合わせることができるのでしょうか。
これが、ボディ覚のもう一つの役割である、「関節がどのくらい曲がっているか」を感じる力です。

この感覚があるから、背中でエプロンのひもを結んだり、シャツの第一ボタンを留めたりすることができます。
また、見える範囲の動きでも、いちいち目で確認しながら動いているわけではありません。
歩く、かがむ、座る、ボールを投げる――これらがスムーズにできるのも、自分のからだの形を自然に感じ取っているからです。

自分のからだの形を感じる力を育むには、遊びの中で、手足を思い切り伸ばしたり、狙ったところに手足を運んだり、いろいろな大きさの穴をくぐったりするのが効果的です。

ねらいどおりに手足を動かす

  • クライミングやネット登り、ジャングルジム:手足の長さを実感し、次にどこに動かすかを意識させる
  • 飛び石:足を大きく伸ばす、ねらったところにジャンプするなど、足の長さや距離感を意識させる
  • 木登り:クライミングなどと同じく手足の長さや次の行動を意識させる。自然物ならではの不揃いさがより効果をもたらす
  • トンネルやネットの穴を通り抜ける:からだの大きさの実感につながる

ギリギリの遊び

子どもは、自分のギリギリを知る遊びが大好きです。

  • ギリギリ手が触れる
  • ジャンプしてギリギリとどく
  • ギリギリ登れる
  • ギリギリ入れる
  • ギリギリ持てる

心理学者のヴィゴツキーは「発達の最近接領域」という概念を提唱しました。
「できること」や「できないこと」よりも「もう少しでできそうなこと」が子どもの発達に良い効果があるという理論です。
そして何より、子どもは「もう少しでできそうなこと」をいちばん楽しいと感じるのです。

ボディ覚の感じ方の違いで生まれる大変さ

感覚の感じ方の違いで大変さが生まれることは、当コラムの『【新五感と遊び②】地球と仲良くなるためのバランス覚』でも触れました。
今回のテーマのボディ覚や今後取り上げる触覚・視覚・聴覚でも同様です。

目いっぱいの力でブランコを押す

【ボディ覚のどん感:力加減】
力の入れ具合が分かりにくいと、力を入れすぎたり、逆に弱すぎたりすることが起きやすくなります。
それが本人にとって困りごとにつながることもあります。

  • 友達に“とんとん”したつもりが、強く叩いたように思われてしまう
  • コップの飲み物をよくこぼしてしまう
  • 細かな作業が苦手
  • 姿勢が崩れやすい

この困りごとの原因となる力の入れ具合を育むためには、力をたくさん使う遊びを取り入れたり、お手伝いの中で重いものを持ってもらったりするなど、「適度な負荷がかかる体験」が良いと言われています。

【ボディ覚のどん感:からだの把握】
自分の手足や指、からだ全体の位置や大きさを把握しづらい状態です。体の大きさをうまく感じ取れないことで困りごとが生まれるほか、ときには手足が“ないように感じる”感覚につながることもあります。

  • よく物や人にぶつかる
  • 強い刺激を求める
  • 椅子をガタガタ動かす
  • 手をよく振る
  • よく飛び跳ねる
  • 着替えが苦手

からだの把握を育むには、次のような遊びが効果的です。

  • ギリギリ通れそうなサイズのトンネルをくぐる
  • シーツなどで体をしっかり包まれる
  • うんていにぶら下がって手足をいっぱいに伸ばす
  • クライミングなどで、手足の位置を意識しながら動く

前にも書きましたが、それぞれの行動は、「周囲から見た時の気になる行動」ですが、実態は「本人の感覚特性による困りごとであることが多い」です。
「力加減」や「からだの把握」の感じ方が違うために、その感覚から逃げようとする行動(感覚回避)であり、逆に感覚を求めてしてしまう行動(感覚探究)なのです。

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