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幼児期の遊びがひらくインクルーシブ社会

コラム

幼児期の遊びがひらくインクルーシブ社会のとびら

2025.10.15

インクルーシブとは?

インクルーシブとは?インクルーシブという言葉が多く聞かれるようになりました。

インクルーシブ教育、インクルーシブ保育、インクルーシブ社会、インクルーシブ公園と数を上げたらきりがありません。

インクルーシブとは、「包括的」や「包み込む」という意味で、障がいの有無、国籍、年齢、性別、宗教など、様々な背景や違いを持つ人々が互いを尊重しあい、排除されることなく社会の一員として共に生きることを目指す考え方です。

間違えやすい言葉に、バリアフリーやユニバーサルデザインがあります。バリアフリーは、公共空間や商業施設などで車いす利用者などがスムーズに移動できるような環境を作ることであり、ユニバーサルデザインは、「すべての人のデザイン」で、最初から誰もが快適に利用できるように建築や製品を設計する考え方です。

なので、バリアフリーやユニバーサルデザインはインクルーシブ社会実現のための「手段」と考えるとわかりやすいでしょうか。

インクルーシブの考え方はマイノリティ(少数派)のためだけではない

インクルーシブ公園オープンのニュースなどを見ていると、車いす利用の子がそのまま遊べる遊具などが紹介されていて、どうしても障がい児が遊べる公園というイメージがあります。障がい児の遊びの権利が保障されたという点では素敵なことです。しかし、それだけでは、インクルーシブ社会の実現には程遠いのではないかと考えています。

一つ興味深い研究結果をご紹介します。
2016年にブラジルのAlana研究所が発表したインクルーシブ教育についての研究です。
知的障がい児が通常クラスで一緒に授業を受けるインクルーシブ教育、当初は、教師が知的障がい児の対応に追われて、一般の子たちの学力低下が懸念されていました。
しかし、Alana研究所が発表した『A SUMMARY OF THE EVIDENCE ON INCLUSIVE EDUCATION』によると、全く逆の結果が出ていることが判明したのです。
つまり、クラスの中に障がい児がいる場合、他の子どもたちの学力は、中立的か逆に上がるという結果が出ました。
障がい児がいることによって、教師の子どもへの接し方が変わったり、子どもたち自身にも変化が現れたりと、複合的な要因によっておこるようですが、非常に重要なポイントです。
インクルーシブ教育では、障がい者の側の権利の保障ももちろんですが、健常者側にも大きなメリットがあるということです。

インクルーシブは幼児期こそが適齢期

幼児期の活動はほとんどが遊びです。
遊びは、主体性を育み、創造性や想像性、創意工夫の力、やり遂げる力、社会性も育みます。
子どもの遊びを見ていると面白いもので、0~2歳くらいまでは、非言語コミュニケーションの中で遊んでいますから、外見の違いとかそういうことではなく、同じ瞬間に一緒に笑えるかとかのほうが重要になります。一緒のタイミングで笑うと、同じなのだなと感じるのでしょうね。

大人は、障がい者や外国人と接すると、つい「違い」をみてから、その違いをカバーしようとしてしまいますが、子どもは遊びの中で「自分と同じところを見つけている」ような気がします。
幼児期に多様な子どもたちを一緒に過ごす、そういった子たちが、成長したときに真のインクルーシブ社会が実現するのではないかと感じています。

インクルーシブな遊び環境の作り方

一般的な配慮
  • 車いす用の駐車場を配置、そこから遊び場まではバリアフリーに
  • 遊び場の表示は多言語表記、点字対応、音声メッセージ対応もできるとよい
  • トイレや水飲み場などはバリアフリーにする
  • 遊具や遊び場デザインはさまざまな宗教に配慮する

インクルーシブな遊び環境の作り方

遊具設計の難しさとバランス

遊具設計の難しさとバランスさて遊び場についてですが、この考え方がとても難しいのです。
日本でも一昔前に車いす用の遊具が登場したことがありました、その時に何が起きたのかというと、すべての遊具を車いす用にしたために挑戦度が低くなり、健常児が遊ばなくなってしまいました。そもそも誰も遊んでないのですから、車いす利用の子にとっても魅力的に見えず、結果誰も遊ばない場所ができてしまったのです。

このコラムの冒頭でインクルーシブ社会の対象者として、障がいの有無、国籍、年齢、性別、宗教など、様々な背景や違いを持つ人々と書きました。実は重要な人たちが抜けています。マジョリティ側にいる普通の人たちです。

車いす利用者に対応できる遊具の設置ももちろん必要ですが、本来の遊び場の意義は「子ども同士が遊びを通した交流の中で生まれる相互作用で発達すること」です。なので、すべてを車いす仕様にしてしまうと、結果的に健常児がいなくなるという現象が起きてしまうのです。

また、発達障がい児や知的障がい児の場合は、からだの使い方にぎこちなさはあるものの、普通の遊具で楽しむことができ、からだを動かすことそのものがその子たちの発達につながっていることを考えると、やはり、挑戦度の高い遊具の設置も必要になります。要はバランスですね。

遊び場の具体例

車いす利用児のための配慮
  • 車いすのまま入れるスロープ付きの複合遊具
  • シート型のベルトで固定できるブランコや、寝ころんだまま乗ることができるブランコ
  • シート型のベルトで固定できるシーソーや、寝ころんだまま乗ることができるシーソー
  • 車いすのまま利用できるテーブル型の砂場
  • 車いすのまま利用できる高さのある水流の遊び場
  • 車いすのまま侵入できる地面と同じ高さのトランポリン
  • 車いすのまま乗り込める回転遊具
  • 車いすのまま利用できるベンチとテーブル

遊び場の具体例

発達障がい児/知的障がい児のための配慮
  • 飛び出し防止用の植木や柵
  • 閉鎖空間となるような、小屋やトンネル
  • 日陰の設置
  • 多様なニーズに対応するための、様々な形のブランコ
  • 挑戦度が違う複数の滑り台
  • 挑戦度が違う複数のクライミングなどの登り遊び
  • 素早い回転が体験できる遊具
  • ウッドチップやゴムチップなど色の違いでゾーンわけを視覚的に分ける工夫
  • 様々な感覚特性に対応できる触り心地の遊具や音の出る遊具の設置

アネビーの取り組み

私どもアネビーでは、保育園や幼稚園の園庭から、公共施設や公園まで、インクルーシブな遊び環境をご提案しています。

ホームページに事例も掲載していますので是非ご覧ください。

https://www.aneby.co.jp/works/inclusive-playground.html

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