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「基準」ってどうやって作ったの?|安全性・保証|株式会社アネビー|幼稚園・保育園・商業施設の遊具・園庭(遊び場)のデザイン設計

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安全性・保証

「基準」ってどうやって作ったの?

2019.04.26

「基準」ってどうやって作ったの?今、日本では遊具の基準において大変な事が起こっています。
日本の遊具の安全に関する基準は、2002年にヨーロッパを中心とした「国際基準EN1176」と「アメリカの遊具基準」をベースにして突貫工事で「日本の基準」がつくられましたが、実は肝心な事を抜いたまま、寸法的な内容をコピーしただけで始まってしまったのです。だから今、その「日本の基準」のせいで日本から遊具自体がなくなってしまっている、そして遊ぶ環境、さらに遊ぶこと自体の重要性が認められなくなってしまいました。

そういえば、皆さんの周りの公園の遊具が無くなっていませんか?
公園や幼稚園・保育所の園庭自体が無くなっていませんか?
さらに遊具によっては遊ぶこと自体が禁止されていませんか?
結果として「日本の基準」によってできた安全の代わりに、私たちが得たものはなんでしょう?

公園のベンチで無言のビデオゲーム。遊びの主体性が少ない習い事。コーチ指導の体育のクラス。
そんな遊びをする子ども達の姿です。

しかし子どもの発達について真剣に考えている保育者は、「日本の基準」が本来の子どもの育ちを目的とすることと相反した矛盾したもの、もしくは基準という名に縛られて子どもの発達を制限するものとして、日々、それに縛られるもどかしさを感じているのです。

さてこのもどかしさを解消するために必要なことは何でしょう?
それは遊ぶ権利を保障することです。

それではなぜ遊ぶ権利を保障するのでしょうか?
それは「遊ぶこと」こそ、子どもの発達や育ちに何よりも有効であるからです。

「基準」ってどうやって作ったの?生物学的には「遊ぶこと」、それは生物が進化の過程で獲得した必然的な大発明だとされています。人間はオギャーと生まれた時から、遺伝子の導きによって「できるだけ多種多様な五感の体験を得る」ことができるようにプログラムされています。それは運動や学習の成長に不可欠な「固有覚」と「前庭覚」の経験を積むことにもつながります。
例えば、初めて一歩を踏み出す時や、重力と物理の法則を克服する時には必ずリスクがあります。しかし同時に、一歩を踏み出すことのベネフィット(※1)もあります。つまり発達のバランスが悪いと、一歩を踏み出した時に転んで怪我をする、悪い時は受け身を取れずに骨折、稀に頭を強く打って死亡します。それが生物です。
国際基準のEN1176では事故報告のシステムを確立して、年間数万件の事故事例を「正確に」(←ここが一番重要)集め、それらを重症度の高い低いにかかわらず、一つひとつ丁寧にリスクベネフィットアセスメント(※2)しています。許容レベルに満たない事例については、アフォーダンス(※3)を見極め、行動分析し、数字化して基準をつくっています。システムができてから数十年経っていますが、現在もそれは更新され続けています。

特に基準に表れる寸法的な数字は、許容レベルをどう見るかによって違ってきます。つまり各国の差はリスクの許容レベルの差、もしくはベネフィットをどう理解しているかの差になります。日本ではヨーロッパとアメリカの基準の両方を混ぜ合わせてはいますが、事故事例を吸い上げるシステムはつくっておらず、リスクアセスメント(※4)も放棄してしまいました。その代わり遊具のカテゴリーの細分化、物的寸法での縛りの多様化、年齢区分の細分化、言語でのルール化という方法での施行となりました。
しかし「日本の基準」の基となったEN1176は、遊びの中で子どもがどう動くのか、運動的な仕組みでの区分、発達(身体能力)での区分、基準寸法はあくまでリスクアセスメントの判断指標となっています。これらの根本的思想の違いが生む相違は大きく、例えば長く国際基準を実践しているスウェーデンでは、乳児から大人まで遊べる遊具のある公園や遊び場が、十数世帯につき、最低でもひとつあります。同時に重症度の高い怪我の発生率については、劇的に減っています。
しかし日本では公園から遊具が無くなり、そして公園自体が無くなり、元気いっぱい遊ぶためには1時間数千円を自己負担で払わなければいけないこともあります。

また検査・点検の際、日本では遊び場が基準に準じているかどうかのみに焦点が置かれます。よって基準の値に1mmでも適っていないと、それは「不適合」の烙印が押され、直ちに「使用禁止」・「撤去」となります。国際基準ではリスクを真剣に査定して、そしてベネフィットがリスクを上回っているかで判断します。基準はリスクを査定する時の判断基準に使われます。
今回は日本基準と国際基準の違いに言及するのに長くなってしまいました。次回は実例を挙げながらお伝えしようと思います。

※1 得られる価値。
※2 2019.1.25のコラム参照。
※3 環境のさまざまな要素が人間や動物に影響を与え、感情や動作が生まれること。
※4 計画に際してリスクをどのように評価し、安全基準を設定するかということ。リスク評価。

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