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安全な遊具とは?その定義について考えること|安全性・保証|株式会社アネビー|幼稚園・保育園・商業施設の遊具・園庭(遊び場)のデザイン設計

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安全性・保証

リスクベネフィットアセスメントとは?

2019.01.25

写真ある園庭に「うんてい」がありました。いわゆる「遊具の基準」にも準じているうんていです。それは導入当初その施設長が、「子どもたちには出来るだけ色んな体験をして欲しい」という想いから、水平で等間隔な一般的なものではなく、傾斜があったり、バーの間隔がランダムだったり、バーが曲がっていたりと、カスタムオーダーで製作してもらったそうです(注1)。それは少し変わった「遊びの価値」の高いうんていでした。そして挑戦意欲あふれる子ども達にとっては、自分の挑戦欲求を満たし、能力を試すことのできる絶好の遊び環境になっていったのです。
そのうんていが生まれて4年目の春、初めて大きな怪我をする子が。3ヶ月の間に3人の子が中程から落ちて腕を骨折。どうやら3人とも一番間隔が広く、高低差のある箇所で、次のバーを掴むのを失敗してしまったためにからだが回転気味に落下、その際、落下からからだをかばうために地面に突いた手を骨折したようです。3人とも回復後は、落下のトラウマもなく、またそのうんていで積極的に遊んでくれました。
しかしもちろん施設長は、ある対策を行います。
それはうんていの最初の一番低いバーを1本、ロープに変えるということです。ロープに変えると掴んだ対象が動く事によって、随分難易度が上がります。その対策後、1年半経過した現在、重度な骨折事故はありません。

安全を考えるのなら、難易度を下げるのでは? と、皆さんは思われますよね。

写真今回、施設長は事故の対策にあたり、前コラムで紹介した「リスクベネフィットアセスメント」を取り入れました。
まずこの3件と同様の重症な怪我が起こる頻度を考えました。3年間で3人、延べおよそ5万人遊んだ中で、重症な怪我をした子が3人です。これが「リスクアセスメント」、つまり危険性の特定・分析・評価です。
次にどのくらいの子ども達が、この間隔が広く高低差のあるバーのあるうんていによって、どんな発達を得ることができたかを考えました。勿論、怪我をしてしまった子も含めてです。これは「リスクベネフィットアセスメント」、つまり危険性と利益の両方についての影響を評価するのです。
その時点で、施設長の考える危険性の許容レベルよりベネフィット(子どものメリット)が上回っていたので、うんていはそのままの状態でも良かったのです。が、施設長は「怪我をしたお子さんの保護者の方々の許容レベルは、自分と違うかもしれない」と考え、リスクを減らしながら、遊びの価値を高める工夫をしようと考えました。そして考えに考えを重ねて出した案は、1本目のバーをロープに変えるという方法でした。
難易度を高くしたので、一見、安全では無い対策をしたように思えます。しかしここで前回のコラムでの「安全」の定義を思い出してください。リスクを許容レベル以下に下げ、かつ遊びの価値をふやすことに成功しているので、実はこの対策も「安全な対策」と言えるのです。
ではもしこの件で、「リスクベネフィットアセスメント」を活用しなかった場合を想定してみましょう。まず「リスクアセスメント」ですが、これは全体に対してのリスクの確率を考えないままでいると、そのリスクの評価は、一番、最近に起こった、一番、重症な事故がその対象になってしまうことが、実はとても多いのです。
次は遊具や遊び場の「ベネフィット」ですが、遊びから得る『非認知能力』に象徴されるように数字化できず、即座に測定できないスキルは、「ベネフィットアセスメント」自体、その評価が行われない事が多いのです。そしてこの場合、最も頻繁に行われる対策は「その対象を無くす/撤去又は立入禁止」することです。普通、リスクはとても高いと思われるのに、それにメリットを感じなかったら当然そうしますよね?
だから私は特に近年、公園から遊具が次から次へと無くなっている理由は、「リスクベネフィットアセスメント」的なアプローチが抜けているからであると思っています。またこども園、有料プレイパークなど管理者がいる遊び場でも、「危ない、危なくない」の形容詞だけで「リスクアセスメント」をするので、どうしても近々の事故に影響されてしまい、挑戦的な遊具や遊びの要素を無くす方向に向かうことが多々見られます。
このコラムを読んでいる方々の周りにもどうでしょうか?そういった事例がありませんか? あ、フレームのみのブランコとか。年齢制限とか。
次回は基準について考えてみたいと思います。

注1:EN1176基準では「うんていは等間隔で直線であるべき」という規制はありません。またつかむ対象物の太さを同じにする制限もありません。

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